2021.2.12
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、退職勧奨や解雇を検討する場合の注意点について
Q.新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、退職勧奨や解雇を検討する場合、どのようなことに注意が必要でしょうか。
A.労働者への退職勧奨をやむを得ず検討する場合、退職勧奨に応じるかどうかはあくまでも労働者の自由であり、労働者の自由な意思決定を妨げる退職勧奨は違法な権利侵害にあたる可能性があることに留意が必要です。
労働者の同意を前提としない使用者による一方的な労働契約の解約は、解雇に該当するものですが、やむを得ず労働者の解雇を検討する場合でも、以下の点に留意が必要です。
① 業務上の傷病による休業期間及びその後30日間や、産前産後の女性の労働基準法第65条の規定による休業期間及びその後30日間は、解雇が禁止されていること。(労働基準法第19条)
② 上記①に該当しない場合でも、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされること。(労働契約法第16条)
また、整理解雇(経営上の理由から余剰人員削減のためになされる解雇)については、裁判例において、解雇の有効性の判断にあたり、
(1)人員整理を行う必要性
(2)できる限り解雇を回避するための措置が尽くされているか
(3)解雇対象者の選定基準が客観的・合理的であるか
(4)労働組合との協議や労働者への説明が行われているか
という4つの事項が考慮されること。
③ 有期労働契約の場合、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間中に解雇をすることはできないこと。期間の定めのない労働契約を結んでいる場合の解雇よりも、解雇の有効性は厳しく判断されること。(労働契約法第17条第1項)
④ 使用者は労働者を解雇する場合には、30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないこと。(労働基準法第20条)
⑤ 事業主には、離職する労働者の再就職支援を援助するなど、労働者の職業の安定を図るよう努める必要があり、一定規模以上の労働者の離職を余儀なくされることが見込まれる場合には、最初の離職が発生する1か月前までに「再就職援助計画」をハローワークに提出し、認定を受ける必要があること。(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第24条第1項及び第3項)
また、最後の離職が発生する1か月前までに、「大量雇用変動の届出」を提出する必要があること。(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第27条第1項)
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雇用維持のため雇用調整助成金などの制度を活用や、新型コロナウイルスに関連して有給の特別休暇制度を設けるなど就業規則の変更を検討される事業主の方もいらっしゃいます。
海星事務所では企業側の立場から法律と裁判例を踏まえ、企業と労働者間のトラブル解決を柔軟かつ積極的に取り組んでおります。
時節柄、対面での打ち合わせは当面控えさせていただいておりますが、弊所では皆さまのお力になれるよう日々サービス向上に努めてまいります。
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