2021.1.29

時短勤務における賃金について

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するために、時短勤務を開始した企業も多くあると思います。

そこで、時短(=所定労働時間の一部を休業させること)勤務における賃金について考えていきます。

 

休業とは、労働者が労働契約に従って労働の用意をし、労働の意思があるにも関わらず、給付の実現(労働)が拒否され、又は不可能となった場合です。事業の全部又は一部が停止される場合だけでなく、特定の労働者に対する就業拒否も含みます。1日すべての休業だけでなく1日の所定労働時間の一部のみの休業も含みます。

 

次に、休業の理由が使用者の責めに帰すべき事由に該当するか否かで賃金の支払いに違いがあります。

不可抗力による休業の場合は使用者の責めに帰すべき事由に該当せず、休業手当(賃金)の支払義務は免除されます。

 

不可抗力とは行政解釈において、以下の2つの要件を満たさなければならないとされています。

ア、その原因が事業の外部により発生した事故であること

イ、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしても、なお避けることのできない事故であること

 

どのような場合が不可抗力の要件を満たし、使用者の責めに帰すべき事由に該当しないか、あるいは不可抗力の要件を満たさず、使用者の責めに帰すべき事由に該当するのかは、企業によって事情が異なるため個別具体的に検討する必要があります。

 

 

では、休業中の賃金ですが、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合、民法第536条2項では債務者(労働者)は反対給付(賃金全額)を受ける権利を失わないとしています。

しかし、使用者と労働者で見解が分かれた場合、実際に賃金を労働者が得るためには最終的には民事訴訟によることになり、時間がかかりすぎることもありえます。

一方で労働基準法第26条では使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中該当労働者に平均賃金の100分の60以上の支払いを義務付けています。

 

これらのことから、使用者の責めに帰すべき事由で休業を行う場合、労働者に対して最低でも平均賃金の100分の60の支払いを行わなければなりません。

また、1日に一部あるいは半分の休業で、既に賃金の支払いを終えた場合でも、その日につき平均賃金の100分の60の支払いが必要です。実際の支払い金額が平均賃金の100分の60に満たない場合は差額の支払いが必要です。

 

なお、労働者がより安心できるように平均賃金の100分の60を超えて支払うことを就業規則等で定めてもかまいません。

 

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