2020.4.27

認知症と遺産分割協議について

契約などの法律行為を行う際、意思能力がなかった場合、その法律行為は無効となってしまいます。

高齢化社会が急速に進行する中、亡くなるまで健康で、自分のことは自分で面倒見ることができる、というのは理想ですが、残念ながら、認知症の問題はどなたにとっても避けては通れない大きな問題です。

 

そこで今回は、相続人の中に意思能力のない認知症の方がいる場合の遺産分割協議についてお話しさせていただきます。

 

亡くなった方が遺言を残していない場合、相続人全員の協議により財産の分割方法を決める必要があります。これを遺産分割協議といいますが、この協議は法律行為にあたるため、意思能力のない方は行うことができません。ではこの場合どうすれば良いのでしょうか?

 

こういった場合は、意思能力のない本人に成年後見人をつけ、成年後見人が本人の代わりに協議に参加することになります。

 

ここで注意しなければならないのは、成年後見制度は、あくまでも本人財産の保護を目的としていることから、本人の取り分が法定相続分を下回ることになるような協議内容では家庭裁判所の許可が下りない、ということです。もし、過去にご家族の間で、本人は相続財産はいらない、子供達で分割すれば良い、といった話し合いが成立していたとしても、原則認められないと考えた方が良いでしょう。

 

相続財産のほとんどが預貯金であるなら、分割は容易ですが、不動産のみ、という場合は、その不動産を共有するしかないという事態にもなり得ます。そうなると、所有者の一方が認知症のため、不動産の売却や有効利用が非常に困難になってしまいます。

 

また、成年後見人をつける、と簡単に言ってはみたものの、申立をするにも様々な準備が必要ですし、成年後見人には弁護士などの専門家が選任されることが多く、その場合は成年後見人に対する報酬が必要です。そして、一度成年後見人をつけてしまうと、本人が亡くなるまで、継続することとなります。

 

こういった事態を避けるためにも、被相続人には遺言書の作成など、事前の準備を検討していただくことが、非常に重要だと考えます。

 

通常、遺産を残す側の意思能力については、皆さま良くお考えなのですが、残される側にも意思能力が必要な場合があることは、ご存知ない方も多くいらっしゃいます。被相続人だけでなく、相続人の意思能力についても考慮に入れた上で、相続対策をすべきであることを、ぜひ一度お考えいただければと思います。

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